INTRODUCTION
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ユダヤ人歴史学者とホロコースト否定論者の対決を映画化!舞台は2000年、ロンドンの法廷。

ユダヤ人女性の歴史学者デボラ・E・リップシュタットは、イギリスの歴史家デイヴィッド・アーヴィングが訴える大量虐殺はなかったとする“ホロコースト否定論”を看過できず、著書で真っ向から対立する主張を繰り広げていた。しかし、アーヴィングは、名誉毀損でリップシュタットを提訴、異例の法廷対決が始まった。この裁判は、開始時から欧米でセンセーショナルに報道され、判決の行方は、ユダヤ人だけでなく、世界の知識層や学者などからも注目された。

裁判の行方を混沌とさせたのは、アーヴィングが提訴した先が、英国の王立裁判所という点だった。英国の司法制度は、訴える側ではなく、訴えられた側に立証する責任がある。それゆえ、訴えられたリップシュタットは、裁判でアーヴィングが唱える“ホロコースト否定論”を崩す必要があった。

このため、彼女のために、英国人による大弁護団が組織された。アーヴィングの日記を調べ上げ、アウシュビッツの現地調査も行い、歴史の真実を確認する作業が繰り広げられる。

その一方で、同時に、弁護団はリップシュタットに対し「法廷では発言しないように」と要請した。しかも、ユダヤ人の生き証人が法廷で証言することも拒否した。

リップシュタットは、アメリカの法廷での戦い方との違いに戸惑い、反発する。しかし、裁判が進むにつれて、弁護団の戦術の深さと巧みさを知る。さらには弁護団の人柄に引き込まれ、この裁判には何としても勝たねばならないという使命感が湧いてくる。

ナチスによる大量虐殺はあったのか、なかったのか。世界中のマスコミが注目するなか、歴史の真実を争う裁判は判決の日を迎えた。

このドラマチックな裁判の映画化にあたって、まず脚本家のデヴィッド・ヘアに白羽の矢が立った。彼はナチスの戦争犯罪裁判を題材にした映画『愛を読むひと』(08)でアカデミー賞®脚色賞にノミネートされている。脚本執筆にあたり、膨大な裁判資料をすべて読みこみ、事実を描くという信念のもと、裁判の再現に真摯に取り組んだ。監督にはイギリス人のミック・ジャクソンが選ばれた。

ホイットニー・ヒューストンとケヴィン・コスナーが共演した往年の大ヒット映画『ボディガード』(92)の監督であるが、最近はドキュメンタリーを数多く手掛けている。本作では、弁護団のやり取りや法廷での審理シーンなどもリアリティーある場面に仕上がっている。

ユダヤ人歴史学者リップシュタットは、アカデミー賞®受賞者であるレイチェル・ワイズが熱演。自身のルーツにユダヤ人の血が流れる彼女は撮影前にリップシュタットに何度も会い、リップシュタットの思考や信念に留まらず、彼女の特性や性格まで把握し、演技に臨んだ。対決する歴史家にはティモシー・スポール、年長弁護士にトム・ウィルキンソンという老練したイギリスの名優が共演し、作品に重厚さを与えている。

“ポスト・トゥルース”や“フェイクニュース”といった、捻じ曲げられた理論であっても、それを声高に主張すれば世間に認められるという現代の風潮にも警鐘を鳴らし、普遍的なテーマを投げかけている。歴史上、争いのないと思われる真実であっても、時として否定論者は現われることがある。ホロコーストという最大にして最悪の世界史を題材とした本作は、歴史の真実を伝え続けなければならない我々一人ひとりに対する警告でもある。